こんにちは、「孤独のメンタルノート」管理人のウーラーです。
わたしは小学校5年生のときに、特定の場面でしゃべれなくなる「場面緘黙(ばめんかんもく)症」になりました。
もう30年近く前の話で、当時はこの病気の存在などまったく知らず大人になってある程度治ってからようやく気づきました
今まさに場面緘黙に苦しんでいる人やその保護者の方は、
「場面緘黙ってどんなタイミングで治るんだろう?」
と気になるのではないかと思います。
わたしの場面緘黙が治った最初のきっかけは「中3で転校したとき」で、そこから
「高校に入学したとき」
「社会に出て働くようになったとき」
と段階をふんで徐々に改善していきました。
この記事では、わたし自身の「場面緘黙になった経緯」や「治ったきっかけ」についてお伝えします。
さらに、他の経験者たちは何がきっかけで治ったのかを知るため「Yahoo!知恵袋」をリサーチして結果をまとめました。
同時に場面緘黙経験者のブログ・本・YouTubeなどもリサーチしたので参考にしてみてください。
また、実際の経験から考える「場面緘黙の症状改善のポイント」
- しっかりメンタルケアをする
- 環境を変える
- 勇気を出す
についてもお伝えしていきます。
少しでも力になれたら幸いです
場面緘黙とは
はじめに、場面緘黙について簡単にふれておきます。
参考サイト:場面緘黙とは | かんもくネット
参考資料:場面緘黙のある方への支援について|高木潤野(PDFファイル・9ページ~)
※上記の参考サイト・資料は場面緘黙についてとてもくわしく説明されていますので、ぜひ目を通してみてください。
場面緘黙の人は、家ではふつうにしゃべっているというケースが多いんですよね。
わたしも発症当時、学校ではひと言も発しませんでしたが家ではむしろふざけまくってうるさいくらいでした
場面緘黙の人には不安や緊張を感じやすい気質が共通していると言われており、これは当事者としてすごく納得です。
また、発達障害の1つであるASD(自閉スペクトラム症)との関連も指摘されています。
あるクリニックを受診した場面緘黙児97人のうち63%にASDがあったという研究報告もあるとのこと
参照:場面緘黙(選択性緘黙)の理解と対応|高木潤野(PDFファイル・2ページ)
場面緘黙者の人数については調査によってばらつきがありますが、千人~数百人に1人いると考えられています。
発症時期や緘黙の程度・抱えている困りごとも人それぞれで、適切な対応を見極める必要があります。
わたしが場面緘黙になった主な要因
わたしが場面緘黙を発症した要因として以下のことが考えられます。
- もともと不安を感じやすい気質
- 発症直前までの充実した環境とのギャップ
幼いころのわずかな記憶をたぐり寄せてみても、物心ついたときからメンタルが過敏な子どもだったのは間違いありません。
もしかしたらASDも関係あったのかな・・・
また、わたしの場合は発症直前までの人間関係が「運よく充実していた」のも1つの要因になったと考えられます。
まわりに甘えられる環境だったため、のちにサバイバル空間に放り出されたときの耐性がついていなかったんです。
もともと不安を感じやすい気質
わたしは幼いころから、家族以外の人間はとにかく苦手でした。
自分ではほとんど覚えていませんが、保育園でもあまりなじめなかったようです。
小学校入学したてのころも、一時的に場面緘黙のようになったことがありました。
大好きなはずの絵を描く時間さえ、体が固まって動けなくなってしまったんです。
そのときは先生に「何でもいいから描こう」とうながされ、ただの「丸」を5、6コ描いて終了・・・。
幼いながら、すごくむなしかったのを覚えています
また、まゆ毛を抜いてまゆ毛が全部なくなってしまい、母にまゆ毛を描いてもらって登校したこともありました。
今思えばストレスが原因の抜毛だったのだと思います。
混乱するとまゆ毛やまつ毛を抜くクセはいまだに残ってます。全部抜かないように制御できるようにはなったけど・・・
発症直前までの充実した環境とのギャップ
そんな対人不安の傾向があっても、なんだかんだでいつのまにかお友達ができていました。
入学したてのときは担任の先生が幼いわたしをそれなりにフォローしてくれていたのだと思います。
おかげで学校でもふつうにさわいだり、ふざけたりして楽しくすごせるまでになりました。
小3で転校したときも、初めはすごく緊張していましたがすぐに慣れることができました。
ここでは親同士の濃いネットワークがあったことで自動的に友達ができ、そこからさらにたくさん友達ができたんです。
このころの友達とは家族と同じくらいよくしゃべり、よくいっしょに遊びました
本来は対人が苦手なのに、特別な努力をせずとも充実した人間関係が作れたのは、もう運がよかったとしか言いようがありません。
そして皮肉なことに、このラッキーがその後の急激な環境変化に適応できない要因の1つになってしまいました。
わたしが場面緘黙になったきっかけ
わたしが場面緘黙になったきっかけは、「小5の12月」とかいう中途半端で微妙な時期に転校したときです!
- 2学期も終わりのすでにできあがっているクラス
- 方言が違う未知の世界
- 親同士のつながりいっさいなし
- 思春期にさしかかる絶妙な年齢でもある
転校した先は、同じ県内でも文化が異なるかなり「なまり」のキツい地域でした。
人口も少なめで、なんか田舎の独特な雰囲気があったなぁ
そして今までと違い、親のコネがまったく使えないので人間関係は完全に自力で何とかするしかない状況でした。
先生も、もはや幼い子どものように手厚くフォローなどしてくれません。
微妙な時期の、「極端な環境の変化」と「手助けゼロ状態」に完全にノックアウトされてしまいました。
場面緘黙当時の様子
転校して1日しゃべれず、2日しゃべれず、3日しゃべれず・・・でそのまま数年間、学校ではしゃべれなくなりました。
「しゃべらない子」というレッテルで身動きが取れなくなり、笑い声も必死に押し殺してましたね。
家では今まで通りよくしゃべったり、ふざけたりしてました
学校での人とのやりとりは、
- うなずく
- 首を横に振る
- 首をかしげる
- 笑顔を見せる
などのジェスチャーで対応。
わたしの場合、授業であてられたときなど答えざるを得ないときは、ギリギリ声を出して答えることはできていた気がします。
声は小さかったと思うけどね
同級生からは、好奇の目を向けられ笑いものになりました。
この仕打ちは当時のわたしにとっては死ぬほど屈辱で、夜ふとんの中でよく泣いてましたね、なつかしい・・・。
この地域で暮らした小5から中2までの期間で、わたしの人間不信の土台はかなり強化されてしまいました。
ちなみに、親も含めたまわりの大人たちは何もしてくれなかったです。
※当時の自分、ひいては今場面緘黙で苦しんでいる人へ、伝えたいメッセージを書いたのでよかったらごらんください。
場面緘黙が治ったきっかけ
わたしの場面緘黙が治ったきっかけは、中3で再び転校したときです。
急にしゃべりだしたわけではなく、ここから段階をふんで少しずつ改善していきました。
転校前から自分でも「学校でまったくしゃべらないという異常な状態はさすがになんとかしなきゃ」とは当然思っていたんです。
何か特別な準備をしたわけではないですが、明らかに状況を変えるチャンスだという認識ははっきり持っていました。
中3のときの転校を機に徐々に声を出し始めた
ちょうど中3に上がるタイミングで、小3から小5までいた地域へ再び転校することになりました。
学区が違うので、小学校時代の知り合いはその中学校にはいませんでした
転校前は1学年3クラスだったのが8クラス規模になり、さらに方言も軽くなって、ド田舎に比べればまるで都会みたいな雰囲気。
またしても環境ががらっと変わったわけです。
そしてこの学校ではわたしのことを「まったくしゃべらない子」だと認識している人は1人もいない状況!
大チャンスなので、これを機に
とにかく笑われることだけは終わらせたい
と強く思いました。
雑談などはほとんどできませんでした。
けっきょく口数の少ない変わり者として扱われ、好奇の目で見られるのをさけることはできなかったです。
しかし学校で声を発することができるようになっただけでも、当時の自分としてはすごい進歩でした。
これまでの場面緘黙の状態からは一歩抜け出したと言えるでしょう。
高校入学のタイミングを逃すまいと勇気を出した
中学卒業後、進学した高校には同じ中学出身の人も少しはいましたが、ほとんどが知らない人たちでした。
またしても、誰も今までの自分を知らないという新しい環境がやってきたわけです
中3での転校からわずか1年後に再びめぐってきた大チャンスに、いよいよこのタイミングを逃してはならないぞと決心しました。
これが人生初だったのではないでしょうか。
わたしは「学校で自分から人に声をかける」という偉業をなしとげたのです!
厳密には先に声をかけてくれたのはその子のほうだったのですが、初めはこちらがうまく対応できませんでした。
しかしこのままではいけないと思い、遠足か何かのときに「いっしょに行ってもいい?」と思いきって声をかけたんです。
その子は快くOKしてくれました。
そこからいっしょに行動することが増え、その子を通して新たな友達もできました。
彼女たちは20年後の今も友達でいてくれています。ありがたいです
おかげでその友人たちとなら雑談もできるようになり、「学校でしゃべらない」という異常な状態からは完全に脱却しました。
ただ、他の人とはやはりうまくしゃべれず、変人として一部の人からは笑われていました。
社会に出て仕事をこなすうちしゃべることに慣れた
高校卒業後は専門学校に通ったのですが、ここではうまくコミュニケーションがとれず孤立しました。
今思えばこのときも方言のまったく違う他県の学校だったので、しゃべりづらさに関係していたのかもしれません
専門学校卒業後はフリーターとして社会に出てアルバイトなどをしながら生活するようになりました。
そして仕事に慣れてくると、仕事の話ならふつうに言葉でやりとりできるようになりました。
仕事では、自分がしゃべらないことには成立しない場面なども多々あります。
社会に出て仕事をし続けるうち「自分の役割を果たすためにしゃべるしかない」と自然に思えたのでしょう。
根がまじめなので、なおさら責任を感じやすかったのだと思います
雑談はあいかわらず難しい課題でしたが、「仕事に関する雑談」なら同じチームの人とはできるようになりました。
上司の愚痴をよくベラベラしゃべってたこともありましたね。
ジェスチャーでコミュニケーションをとっていた時代がウソのようです
また仕事をまじめにこなしてきた結果、うまくしゃべれなくても周囲に笑われることはほとんどなくなりました。
知恵袋リサーチでは「高校入学きっかけ」が最多
場面緘黙が治ったきっかけについて「他の人たちはどうなんだろう?」と思い「Yahoo!知恵袋」をリサーチしてみました。
- 「場面緘黙症」(解決済み)で検索
- 2710件のうち関連度順上位の約250件を調査
- 調査日:2023/6/29
今回は検索上位約250件のうち「治ったきっかけ」に明確に言及していたコメント30件についての結果をまとめます。
また、場面緘黙経験者のブログ・本・YouTube(コメント欄含む)もいくつか確認してみました。
さすがに全部を確認とはいきませんでしたが、参考になると思います~
<場面緘黙が治ったきっかけ調査結果>
きっかけ | Yahoo!知恵袋 | 経験者ブログ・本 | YouTube(コメント欄含む) |
---|---|---|---|
高校入学 | 15人 | 4人 | 6人 |
就職(バイト含む) | 4人 | 3人 | 2人 |
転校 | 3人(中学2人、時期不明1人) | – | – |
大学入学 | 2人 | 3人 | 2人 |
中学入学 | 2人 | 1人 | 1人 |
中学でできた積極的な友達 | 2人 | – | 1人 |
中学・高校の部活動 | 1人 | 2人 | – |
専門学校入学 | – | 1人 | 1人 |
その他 | 1人 | 3人 | – |
あいまいな表現(「高校のとき」「新しい環境」など)のコメントは今回カウントしませんでした。
その人たちのぶんも含めれば、実際にはもっと多くの人たちが場面緘黙を乗りこえてきたことになります。
今回の調査では、知恵袋だけでなくブログやYouTubeでも「高校入学きっかけ」で治った人が最多という結果になりました。
印象的だったのは「自分がしゃべらないことを誰も知らない環境」に言及する人がかなりの割合でいたことです。
「変わるならここだ!」ってがんばったんだよね。みんな同じなんだなぁ~
また全体を通して、やはり突然しゃべりだすというよりは「そのタイミングをきっかけに徐々に改善した」という人が多かったです。
まわりの人たちの自分に対する態度もかなり影響するみたい。安心できる環境が大事なんだよね
経験から考える場面緘黙改善のポイント
場面緘黙経験者として、症状改善のポイントと考えられることをお伝えします。
「場面緘黙が治る」=「声が出るようになる」で終わらせるのは中途半端な考え方だと思います。
ただ声さえ出せりゃいいってもんでもないでしょう?
場面緘黙発症の大元にあるのは「不安になりやすい気質」のはず。
まずはその部分をケアすることがすごく重要です。
その上で、環境を変えたり行動を起こしたりしていくのがいいと思います。
しっかりメンタルケアをする
表面的な対策を打つことよりまずやってほしいことは、自分自身のメンタルの「ケア」や「トレーニング」です。
わたしの経験から考えても、場面緘黙は治ったと思っても環境によってはまた症状が出る可能性があります。
不安になりやすい気質そのものは変えられないからです。
その気質が場面緘黙を生むので、根本的なところをケアしないと堂々巡りになってしまいます。
もし直接サポートしてもらえる人が身近にいるなら、いろいろ相談してみてください。
頼れる人が誰もいない場合は、自分でメンタルに関連する情報をとってきて必要なことを学ぶといいと思います。
今は本でもYouTubeでも、メンタル関連の情報を発信している人がたくさんいますから、これを活用しない手はないです。
知識がつくだけでも視野が広がり、心が楽になりますよ
大事なことは、直接でも間接でもいいので、とにかく「人の助けを借りる」という考えを持つことです。
自分のやり方だけでは限界があるので、専門家の人などの情報を柔軟に取り入れる姿勢を持つように心がけてみてください。
環境を変える
環境が変わるタイミングというのは、場面緘黙改善に向けたかなり大きなチャンスです。
これはわたしの経験だけでなく、知恵袋やブログなどの当事者情報からも同じことがうかがえます
できれば自分が「しゃべらない子」であることを誰も知らない環境が理想です。
とはいえ子どもが自力で無理やり環境を変えるのは難しいですよね。
辛抱が必要にはなりますが、入学などのタイミングを待ってひそかに心の準備を進めておくのもいいかもしれません。
相談できそうな人がいるなら思いきって相談してみるのも手です
保護者の方がすでにお子さんの症状を認識している場合は話が早いです。
大人パワーで適切な環境を用意してあげるなど、できるだけサポートしてあげてほしいと思います。
むろん、無理強いはNGです。
周囲に強要されるとよけいに怖くなり、悲しくなります!
まずは本人の意思を尊重してください。
勇気を出す
厳しい現実かもしれませんが、場面緘黙を改善したいなら勇気は必須です。
よっぽどラッキーなことでもないかぎり、無意識に突然しゃべりだすのは難しいと思います。
わたしも環境の変化をきっかけにちょっとずつ勇気を出し、しゃべれるようになりました。
もちろん、無理はしなくていいです。
というか無理をしてはいけません
いきなり上手にやろうとしなくていいので、「スモールステップ」でほんのちょっとずつがんばってみませんか。
勇気を出して場面緘黙を改善してきた人がこの世にいっぱいいることを覚えておいてほしいと思います。
その人たちはみんなあなたの味方です。
何度も言うけどちょっとずつで大丈夫だよ!
おわりに
わたしの場面緘黙が治ったきっかけは
- 中3で転校したとき
- 高校に入学したとき
- 社会に出て働くようになったとき
で、いきなり治ったのではなく段階をふんで改善したという感じでした。
場面緘黙が改善するきっかけとして、「環境が変わる」のが効果的なのはほぼ間違いないと思います。
そこに本人の「ほんのちょっとの勇気」も必要になってきます
知恵袋やブログなどで他の経験者の話を見ても、「環境の変化」と「自分の意志」が治るきっかけになったという人が多かったです。
ただ、もちろんこれがすべてではないでしょう。
メンタルの問題って、1人ずつカスタマイズされているみたいなものなので対応が難しいんですよね。
- 持って生まれた気質
- 育った環境
- 経験してきた内容
みんなそれぞれ違うので、これといった正解がありません。
まずは自分に向きあい、自分をよく知るところから始めてみてほしいと思います。
そして今の自分を温かく受け入れてあげてください!
がんばるのはそれからですね。
ちょっとずつで大丈夫なので、現時点でできることをゆっくり考えてみましょう。
あせらずゆっくりね。味方はいっぱいいるからね